先日、実家の母から本探しを頼まれました。
『おくのほそ道』の芭蕉の句が全部載っている本が欲しいのですって。
何かのテレビ番組で、芭蕉の筆跡を目にして興味を持ったようなのです。母は長く書道を習っていましたので、芭蕉が達筆だったということを知って読んでみたくなったのでしょう。
『おくのほそ道』それ自体はさほど長いものではありませんし、文庫本などでも比較的読みやすいものが出回っているのですよね。でも母が欲しいのは多分現代語訳とか古文の解釈とかそういう本ではなくて、紀行文として楽しめるというか旅の様子がわかるような情報もあわせて掲載されている本なのではないかと思いました。できれば、芭蕉自筆の句が載っているもの…。
ネット書店をあちこち探してみましたけれど、なかなかこれという決め手がありません。芭蕉自筆の草稿本が20年ほど前に公表され、岩波文庫からも出版されていました。ただ、全文がくずし字で書かれているとなると、いくら母が多少読めると言っても挫折しそうだな~と思ったり。結局探しきれず、何冊か候補を選んでおいて書店へ出向きました。…というか、目についた書店に入っては『おくのほそ道』の本をパラパラとめくってみました。
ところが、街の書店にはなかなかないのですね…。参考書とか解説書のようなものはあっても(数はあまり多くありません)、趣味として読める&あまり難しくはないもの…にはうまく出逢えません。候補に挙げていた数冊の本もあったりなかったりで、しかも思っていたのとはちょっと違ったり。
最終的には、やはり大型書店にたどり着きました。そこでも『おくのほそ道』はあまり多くは置いてありません。でもそこで、おっ!?という本を見つけることができました。原文も現代語訳も地図や挿絵も載っていて、俳句の文字は大きめです。そして、芭蕉自筆ではありませんけれど俳句は毛筆で書かれているところが味があっていいなぁと。A5サイズですので文庫本よりは読みやすそうですし、ページの角が丸くカットされていて優しげな雰囲気も気に入りました。
82歳の母はとても目が悪いため、少しでも読みやすいものを…と考えます。体調面からあまり外出もできませんので、楽しめそうなことがあるなら嬉しいのです。早めに渡したくてレターパックで送ったところ、早速少しずつ読み始めてくれているようです。『なかなか進まなくてね…。眺めているだけのことも多いのよ』と言いますけれど、それでも弾んだ声を聞けることが嬉しくて。
母のために本を探している間、ひとりで書店めぐりをしているにもかかわらず、母の声を聞きながら母と一緒に書棚の間を歩いているような感覚がありました。何だか楽しかった!
実はこの本、ネット検索では見つけられていなかったものです。帰宅してから改めて探し直して、ようやく出てきました。
ネット書店にはどんな本もありそうな気がしてしまいますけれど、やはり歩き回って出逢える本もあるのですね。これだから、書店めぐり(パトロール?)は楽しいのよね~、やめられないのよね~とひとり悦に入っている私なのでした。
そして驚いたことに…。完全に理系で古典などには疎い父が、先述した岩波文庫の芭蕉自筆本をこっそり買っていたそうなのです!
母を喜ばせたい一心だったのでしょうね。
やるな~♪